2019.06.28 ~だからヴィンテージ生地はやめられない~
偶然の連続、そして人の想いを紡ぐということ
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私がヴィンテージ生地専門のオーダースーツサロンを始めたのは、惚れ惚れする生地の美しさや生地の希少性、そして『誰もやっていなかったこと』が大きな理由です。それだけではなく、もう一つ私がヴィンテージ生地が素晴らしいと感じていることを今回は紹介します。

私が素晴らしいと感じることの一つに、生地や人にまつわる多くの物語があります。私の心に響くヴィンテージ生地は、時代が古いというだけでなく、大切に作られたものがほとんど。そんな生地に関わる人もモノづくりや人間関係を大切にしている方が多く、その一端を感じると、何とも言えない感動を味わえることがあります。そんな瞬間、私はこの仕事、この方法を選んでよかったと心から思うのです。つい最近も、とある生地を仕入れた際にこんなことがありました。

ある日、生地を引き取ってほしいとの連絡を受け、まずは生地を見せてもらおうと早速現地に向かいました。そこはかつて羅紗店を(※)営んでおられた家庭で、到着すると女性の方が出迎えてくれました。早速生地を拝見させていただくと、とても上品で美しいだけでなく、大切に扱われていたことがすぐに分かりました。「きっとお祖父さんが大切にしていたものだろう」と思いながらも、後日引き取りに来ることをお約束し、その場を後にしました。

※羅紗店とは紳士服地卸商のことを指し、メーカーから仕入れた生地をテーラーに販売していた

数日後、引き取りに伺うことを連絡し、現地に向かっている際、ふいに思い出したことがありました。それは「そういえば、ほとんど同じ札が付いていたな」と。生地にはどこで購入したかを示す商社の札が付いているのですが、複数の種類があることが普通。しかし今回の生地には、ほぼ同じ札が付いていたのです。しかも私はその札に見覚えがありました。約20年前に自主廃業されたA商社のものではないかと。そこは良い生地ばかりを扱っていたので、業界でも評判の商社だったので私も覚えていました。

これだけでも珍しいことなのですが、さらにストーリーは続きます。以前からお付き合いがある別の方で「以前はA商社で働いていた」という方がいらっしゃったことを思い出したのです。すぐにお電話をしたところ、今回の元羅紗店さんをご存じで「お祖父さんにはとてもお世話になった」とのことでした。既に元羅紗店さんには到着していたので「実はお孫さんから生地を引き取ることになって、今隣に居らっしゃるんですよ」とお伝えしました。電話を代わりしばらくお二人でお話されていましたが、娘さんは本当に感動され「まさか祖父のことをよく知っている方と、こんな風にお話しすることになるとは思わなかった」と、感極まって涙を流し感動されていました。私も思わずもらい泣きをするくらい、お孫さんの想いを感じられました。凄い偶然もあるものだと本当に驚きましたが、生地を大切にしていらっしゃったそのお祖父さんが、娘さんへの最後の挨拶も込めて私に引き合わせてくれたのではないか、そんな風にも思えたのです。

 

素晴らしい生地、そして人の想い。その両方を大切にして、これからもヴィンテージ生地のスーツを仕立てていきたいと改めて感じた出来事でした。


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