2022.10.14 テーラーは職人なのか、ビジネスマンなのか。 CUSTOMER

移転をし、完全紹介制、完全予約制に移行させていただき、約1年が経ちました。移転前からお客様はもちろん、新たなお客様にも恵まれ、大変感謝しております。特にご紹介をしていただける機会が多く、これまで以上にご縁を大切にしていきたいと痛感しております。

 

また、じっくりと考えたり、サービスや技術の向上に時間を費やす時間が増えました。どうしたらお客様に喜んでいただけるかを考えることはもちろん、やはり気になるのはオーダースーツ業界のこと。今回は「オーダースーツ開業ビジネス」についてお話したいと思います。

最近「誰でも簡単にオーダースーツ開業できます」というような広告をよく目にします。多様な働き方が認められる社会になったことや、在庫を持たなくてもいい業態ゆえに、個人でもオーダースーツ店を始めようとする方も多いのではないでしょうか。業界が盛り上がることは良いことですし、そのような風潮については決して悪いことではないと思います。ただ「オーダースーツ開業ビジネス」については気になることあります。

 

「オーダースーツ開業ビジネス」は、生地屋さんや工場の紹介、採寸技術講習、販売面のサポートなどをセットに販売されていることが多く、極端に言えば上記ができればオーダースーツ店はできてしまいます。ただ、採寸技術や縫製技術などは、一朝一夕で習得できるものではありませんし、お客様とのコミュニケーションから要望をくみ取りご提案することが大切です。お客様にベストなご提案をするためには経験が必要で。それは業界の方なら誰もが気づいているはず。にも関わらず、簡単に開業できるオーダースーツ店が増えることで、以下のようなことを私は懸念しています。

 

·技術力(採寸技術や縫製技術、型紙制作など)が乏しいオーダースーツ店が増えてしまう

 

·オーダースーツの価値が損なわれてしまう

 

·技術力の高いテーラーや職人さんが、未熟な方と同等に見られてしまう

 

こうした結果、業界全体の価値を下げてしまわないかと危機感を覚えています。これを防ぐために、テーラーは技術力に応じた資格制にするのが良いのではないかと個人的には思います。また同時に、皆様にはしっかりとしたオーダースーツ店でスーツをお仕立ていただきたいと願っています。お店を見極めるポイントは自社で裁断をしているか、が一つの基準です。

 

「オーダースーツ開業ビジネス」は一括りに悪いと考えている訳ではありません。お金儲けだけでなく、高い技術力を持ち素晴らしいスーツを仕立てられるお店やテーラーが増えてほしいと思うのです。